早いもので、今年もあと十日ほどとなりました。
本日ご紹介するのは、芋焼酎「蔓無源氏」です。
鹿児島県霧島市国分の国分酒造さんの一品です。
国分酒造さんの焼酎は、以前に芋焼酎「いも麹 芋」をご紹介させていただきました。
「いも麹 芋」はその名の通り芋麹仕込みで、すっきりとした味わいにドライな風味がじわりとくるうまい焼酎でした。
そして「蔓無源氏」ですが、こちらはまず国分酒造さんの大正時代の造りを再現したいとの思いから造られています。
その元となった焼酎が芋焼酎「大正の一滴」。
大正当時に芋焼酎造りに黒麹が定着したころ、黒麹を長く培養した”老(ひね)麹”を使って仕込まれていたことから、国分酒造さんが同じ老麹で仕込むことでまず醸されたのが「大正の一滴」です。
ところが「大正の一滴」は、芋焼酎造りにおいて現在とてもポピュラーとなっている黄金千貫が使用されていました。
そこで国分酒造さんでは、今度は原料芋から大正時代の造りにこだわりたいと思いから、当時盛んに生産されていたサツマイモである”蔓無源氏”を原料に選ばれたとのことでした。
しかしそのとき蔓無源氏はすでに絶滅状態にあり、わずか10本の苗を入手しそれを地元農家の谷山さんに託して栽培を始めたそうです。
栽培を始めて焼酎造りができるまでの収量になるまでまず3年、黄金千貫と混ぜながら仕込みを始め、全量蔓無源氏で仕込めるまでさらに5年かかったようです。
大正時代へのものすごいこだわりと思い、そしてとてつもない根気ですね。
本当にすごいです。
そして平成25年以降販売されたものは、霧島産の長粒米である夢十色を麹米として使用されています。
大正時代の焼酎の再現にとことんこだわられて醸された「蔓無源氏」、その味わいがどんなものなのか・・・とてもワクワクしますね。
黒麹(老麹)仕込み、常圧蒸留でアルコール度数は26度に調整された焼酎であります。
それでは開栓してみましょう。
香りはといいますと、爽やかなどことなく柑橘系を思わせる甘い香りです。
いい匂いですね。
寒波で今夜はしんと冷えますが、ロックでいただいてみましょう。
口に含みますと、まず穏やかな芋の甘みが最初に口いっぱいに広がります。
口当たりは優しい感じですね。
やがて広がる甘みの中にドライな風味がフェードインしてきます。
後味は、ほんのりとした甘さとドライな風味が直線的に広がり、最後の最後に優しい芋のコクとドライビターな余韻。
その後にスッとキレていきます。
おぉぉ・・・うまいですねぇ。
全体的には黒麹の焼酎らしいややドライな味わいの構成ですが、ほんのりとした甘さは最後までしっかりと伸びて、甘さと辛さがバランスよく調和しています。
そして芋のコクの余韻の後のキレの良さが、なんとも心地良いうまい焼酎だと思います。
大正時代の人たちは、こんなうまい焼酎を楽しまれてたんですね。
「蔓無源氏」を味わいながら、大正時代にタイムスリップと言いたいところですが、国分酒造さんの想いがあまりにすごすぎて、正直泣けてきてしまいました・・・
蔵人のすべてが注ぎ込まれ結晶化された焼酎、飲み手として味わえることは幸せであり、この上なしだと思います。
焼酎の奥深さをあらためて実感です。
2023年にご紹介する焼酎は、これで最後になります。
今年もまた、うまくて素晴らしい焼酎で最後を締めくくることができ、とても嬉しく思っております。
またこれまで当ブログへお越しいただきましたこと、大変感謝しております。
来年もまた、どんなうまい焼酎に出逢うことができるかとても楽しみにしています。
更新ペースは相変わらずゆっくりになりますが、来年もまたどうぞよろしくお願い致します。